上野の森美術館

アートスクール

アトリ絵ブログ

【受講生募集】夏季特別講座ピックアップ!vol.4「鮮やかな色彩を楽しむ『ガラス絵入門』」※追記あり

2018年8月12日

夏季特別講座ピックアップ!vol.4

8月のお盆から下旬にかけて毎年開催される「夏季特別講座」。
その中からいくつか講座をピックアップして、ご紹介します。

大見先生ガラス絵作品。ガラス絵を、より引き立たせている額にも注目です!

今回ご紹介するのは
8【特別】鮮やかな色彩を楽しむ『ガラス絵入門』日程:8月19日~20日(日・月)です。

ガラス越しの鮮やかな色彩を楽しもう!ガラス絵入門編

「ガラス絵」とはどういうものかご存知でしょうか? 板ガラスの片面に絵を描き、反対の面よりガラスを通して鑑賞する絵画です。
一般的に、キャンバスなどに油絵の具で描くと特有の凸凹な質感になりますが、ガラス絵の場合は絵の具がガラス面に密着するため、ペタッとした平滑な絵になります。ガラスに密着した絵の具は凹凸がないことにより色鮮やかに発色し、そのフラットな仕上がりと鮮やかさは、通常の絵画とは一風違う面白味にあふれています。その意外性のある平滑な質感と色彩に魅了され、長谷川利行、小出楢重、藤田嗣治などの多くの画家がガラス絵に取り組んでいます。

本講座は「入門編」として、絵画初心者の方やガラス絵が初めてという方に、気軽に受講していただくために特別にプログラムした講座です。

2日間と時間を長く設定しましたので、慣れていない方でも余裕を持って制作していただけます。

担当の大見先生に講座について詳しく伺ってみました。

──授業はどんな感じで進んでいくのでしょうか。

まず、予め用意していただいた題材を元に下絵を作ります。家族やペット、風景などお好きな写真や、スケッチ、以前描いた作品etc…題材は何でも構いません。
ガラスと同じ大きさの紙に鉛筆で下描きをしてから、水彩やパステル、アクリルなどで色を付けていきます。下絵はしっかりと作っておいた方が良いので、午前中いっぱいを下絵の作成に当てます。
下絵が完成したら、コピー機で左右を反転させます。

──ガラス絵は、裏側から描くので反転させておくことが必要なんですね。

その通りです。
コピーした下絵をガラスにテープで仮止めをして、いよいよ本制作です。

ガラス絵にチャレンジ!下絵を反転し、ガラスを上に置いたところです

──まず、何から始めるんでしょうか。

一番はじめは油性ペンや油絵の具で、線描きをするイメージで下絵をトレースしていきます。これが完成したときに一番表に来る層になるわけです。
第1層が乾いたら、今度は2層目を塗っていきます。第1層の線的な表現に対して、今度は面で色を付けていくイメージです。ぼかしや透明感のある薄塗りを施す場合も、この段階で行います。細かい点描のような表現もこの層で行うのが効果的です。

1層目。初めに細部から描きます。

──何層か重ねていくということですね。

今回は3層を目安にしています。少し複雑な表現になると5層くらいまで重ねることもあります。

2層目です。


3層目です。層を重ねるごとに大胆な塗り具合に。


ここで表から見るとこんなかんじです。初めに描いた細部が生きています。

──どの程度の画材を用意していく必要がありますか?

12色の基本セットで描けます。
初日に描き方のコツをレクチャーをしますので、経験がなくとも安心です。油彩未経験者でも十分に楽しみながらご参加いただけます。

──今回の授業のポイントは?

ガラス絵の描き方はちょっと特殊です。一般的な絵画とは逆の手順で描きます。
つまり「修正が効かない」…言ってしまえば、思ったようにいかない技法です。
難しいと思われるかもしれませんが、私は反対に遊び心を持って楽しく創作できる素材だと感じています。
その楽しさを体験していただきたく、今回は入門編として授業を展開します。


クレーの作品を参考に、ガラス絵にチャレンジしている人もいますよ。


濃い紫で、2層目を。2層目に塗る色の事を考えて、1層目は鮮やかな色彩で、薄めに塗っています。


2層目は全体にしっかりと塗っていきます。濃い色を全体に塗ることで、絵に深みと統一感が出ます。

──最後に一言お願いします。

ガラス絵の最大の利点は、自分の描きたい絵画をしっかりとイメージする力がつくということです。
何かを「つくる」ということにおいて重要なことは、出来上がりのイメージをしっかり持ち完成させることです。
その意味でも、完成のイメージを持って取り組むガラス絵は、ただ楽しいだけでなく自然と創作力が身についていきますよ。

──ありがとうございました!

ガラス絵は、「こうしたらこんな風になるかな?」と、未知の世界を探求しながらわくわくできて、自分自身に新鮮な刺激を与えてくれる素材だと感じました。

今回は入門編ですが、2018年後期単発講座では、この一歩先を行く「創作〜その根幹をガラス絵から学ぶ〜」という授業を展開します。ぜひ両講座とも受けてみてくださいね。

ご不明点は、上野の森アートスクール(TEL.03-5817-2810)まで、どうぞ。

大見先生パステル画作品。以前描いたパステル画などの作品をガラス絵にすることもOKです

追記:8/15(水)
ガラス絵にチャレンジしていたお二人の完成作品をUPします!

ジョアを描いたガラス絵です。背景は、ガラス絵特有のにじみなどの質感を利用し仕上げていますね。透かして見てみると涼しげになりそうです。モチーフはしっかり塗り、背景は薄くといったコントラストが楽しい作品です。

ガラス絵完成

パウルクレーの作品を取り入れて作られたガラス絵です。金色の光っている部分は金箔です。凸凹した紙に金箔を貼ったものをガラスの後ろからあてています。そのことにより、金箔に陰影が付き微かな空間が生まれます。こってりとした絵の具と金箔の軽やかさが響き合い、面白い作品になりました。箔はガラスに直接も貼ることも可能で、直接貼るとピタッとした平滑な金箔になり、それもまた金箔の美しさを際立たせます。作品によって工夫されると良いでしょう。

ガラス絵完成


クローズアップ

お二人とも、初めてガラス絵に挑戦されたとのことでしたが、楽しまれていました!