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VOCA展 現代美術の展望-新しい平面の作家たち VOCA30周年記念 1994-2023 VOCA 30 YEARS STORY / KOBE展

会期:2023年3月9日(木) ― 3月25日(土)
会場:神戸・原田の森ギャラリー

  • 福田 美蘭
  • 世良 京子
  • 三輪 美津子
  • 東島 毅
  • 小池 隆英
  • 湯川 雅紀
  • やなぎ みわ
  • 岩尾 恵都子
  • 押江 千衣子
  • 曽谷 朝絵
  • 津上 みゆき
  • 前田 朋子
  • 日野 之彦
  • 小西 真奈
  • 山本 太郎
  • 横内 賢太郎
  • 三瀬 夏之介
  • 三宅 砂織
  • 中山 玲佳
  • 鈴木 星亜
  • 鈴木(花房)紗也香
  • 田中 望
  • 小野 耕石
  • 久門 剛史
  • 幸田 千依
  • 碓井 ゆい
  • 東城 信之介
  • Nerhol
  • 尾花 賢一
  • 川内 理香子

アーティスト・トーク

関西に在住のVOCA賞受賞作家によるアーティスト・トークを開催します。

会期2023年3月25日(土) 14:00 ~ 15:30
会場原田の森ギャラリー 展示室
出演者東島毅 (1996年 VOCA賞)、やなぎみわ (1999年 VOCA賞)、三宅砂織 (2010年 VOCA賞)
お申込み:不要、ただし入場券が必要です。 ※混雑する場合は入場にお待ちいただく場合があります。

開催主旨

このたびVOCA展の30周年を機にこれら歴代のVOCA賞受賞作品30点を展示する記念展を『VOCA 30 YEARS STORY / KOBE』として兵庫県立美術館王子分館 原田の森ギャラリーにて開催いたします。

1994年にスタートした「VOCA(ヴォーカ)展」は、絵画、写真、など平面の領域で国際的な活躍が期待される、高い将来性のある若手作家の支援を目的に、VOCA展実行委員会と上野の森美術館が主催し、毎年開催している美術展です。
日頃から公平な立場で作家たちと接している全国の美術館学芸員、研究者などから推薦された40歳以下の作家を毎回紹介し「VOCA展2023」で1,013人の作家が本展に参加。現在の美術界をリードする存在を数多く輩出してきました。

本展は、VOCA賞受賞の全作品が東京以外の会場で一堂に会す初のこととなり、今や美術界をけん引する作家たちの、活動初期の貴重な作品がご覧いただけるまたとない機会となります。

VOCA賞受賞作品1994-2022

VOCA1994 VOCA賞 福田 美蘭
《STAINED GLASS》
アクリル・パネル 227.2×181.8㎝
VOCA1994 VOCA賞 世良 京子
《BACK OF BLACK No.19,No.20》
パウダー・カンヴァス 229.4×183.9㎝
VOCA1995 VOCA賞 三輪 美津子
《道》《emotional rescue》《風景としての風景画》
油彩・カンヴァス 80.3×53.0㎝,227.3×181.8㎝,162.0×162.0㎝
VOCA1996 VOCA賞 東島 毅
《BB-007》《BB-008》
油彩・ジェッソ・レズン・カンヴァス 227.3×181.8㎝,227.3×181.8㎝
VOCA1997 VOCA賞 小池 隆英
《undercurrent》
アクリル・綿布張りパネル 240.0×368.0㎝
VOCA1998 VOCA賞 湯川 雅紀
《無題》
油彩・綿布 223.0×398.0㎝
VOCA1999 VOCA賞 やなぎ みわ
《案内嬢の部屋 B4》
カラープリント・アクリル・木製パネル 200.0×240.0㎝
VOCA2000 VOCA賞 岩尾 恵都子
《Oslo》《Cuzco》
アクリル・綿布・パネル 217.0×175.0㎝
VOCA2001 VOCA賞 押江 千衣子
《ゆたか》
オイルパステル・油・カンヴァス 194.0×388.0㎝
VOCA2002 VOCA賞 曽谷 朝絵
《Bathtub》
油彩・パネル 162.0×227.5㎝
VOCA2003 VOCA賞 津上 みゆき
《View,Sep-Nov,02》
顔料・膠・アクリル・油彩・水彩・鉛筆・パステル・その他・綿布・パネル 182.0×228.0㎝
VOCA2004 VOCA賞 前田 朋子
《it overlooks》
油彩・カンヴァス 182.0×182.0㎝,156.0×156.0㎝
VOCA2005 VOCA賞 日野 之彦
《あおむけ》《口に両手》
油彩・パネル 240㎝×130㎝×3㎝ ,140㎝×200㎝×3㎝
VOCA2006 VOCA賞 小西 真奈
《キンカザン1》《キンカザン2》
油彩・カンヴァス 181.8㎝×227.3㎝×3㎝, 162㎝×194㎝×3㎝
VOCA2007 VOCA賞 山本 太郎
《白梅点字ブロック図屏風》
紙本銀地着色・二曲一双 166.7㎝×145.6㎝×1.7㎝(×2点)
VOCA2008 VOCA賞 横内 賢太郎
《Book-CHRI IMOCE》《Book-CHRI FFTC》
染料・メディウム・サテン布 131.0㎝×195.0㎝
VOCA2009 VOCA賞 三瀬 夏之介
《J》
墨・胡粉・金属粉・金箔・染料・アクリル・和紙 250.0㎝×400.0㎝
VOCA2010 VOCA賞 三宅 砂織
《内緒話》《ベッド》
ゼラチンシルバープリント 145.0×165.0cm,145.0×165.0cm
VOCA2011 VOCA賞 中山 玲佳
《或る惑星》
アクリル、カンヴァス 130.0×388.0×3.0cm
VOCA2012 VOCA賞 鈴木 星亜
《絵が見る世界11_03》
油彩、カンヴァス、パネル 242×242×3.5cm
VOCA2013 VOCA賞 鈴木(花房)紗也香
《あの日の眠りは確かに熱を帯びていた》
油彩、アクリル、布、カンヴァス 227.3×363.6×5cm
VOCA2014 VOCA賞 田中 望
《ものおくり》
白亜地、胡粉、墨、箔、モデリングペースト、岩絵具、綿布パネル 230.0×340.0cm
VOCA2015 VOCA賞 小野 耕石
《Hundred Layers of Colors》
油性インク、紙 245×390×5cm(75×90cmの作品が12点)
VOCA2016 VOCA賞 久門 剛史
《crossfades #3》
紙、ルーペ、真鍮:ムーブメント、電池、アルミ、木材、その他 71.0×51.0×5cm、71.0×51.0×4cm
VOCA2017 VOCA賞 幸田 千依
《二つの眼を主語にして》
アクリル、油彩、カンヴァス 291.0×227.3cm
VOCA2018 VOCA賞 碓井 ゆい
《our crazy red dots》
糸、布 135.0×205.0cm
VOCA2019 VOCA賞 東城 信之介
《アテネ・長野・東京ノ壁ニアルデアロウ摸写》
錆・顔料・油彩・アクリル・ステンシル・転写・鋼板 230×369cm
VOCA2020 VOCA賞 Nerhol
《Remove》
インクジェットプリント 150×204×5.7cm
VOCA2021 VOCA賞 尾花 賢一
《上野山コスモロジー》
インク・ワトソン紙、木枠 250×400×20cm
VOCA2022 VOCA賞 川内 理香子
《Raining Forest》
油彩、カンヴァス 227.3×363.6×6cm

VOCA賞受賞者のコメント

「平面作品の可能性を探る」ことを目指し始まった本展は、1994年の発足から30年が経とうとしています。これを機に歴代のVOCA賞受賞者へ以下の5つの質問をし、当時の作品を振り返りVOCA展への期待などのコメントをいただきました。

1 VOCA賞を受賞した作品について、作品のコンセプトやモチーフ、制作当時のエピソードなどお聞かせください。
2 VOCA展への出品や受賞は、あなたのキャリアにとってどのような影響がありましたか。
3 今後のVOCA展に期待することはありますか。
4 現在の制作や活動について、テーマや内容などお聞かせください。
5 今後の展示や発表の予定があれば教えてください。

VOCA1994 福田 美蘭 FUKUDA Miran

1 制作当時、西洋の古いステンドグラスの黒い線が、絵柄に対してあるべきでないところに入る意外性と、それが絵画を構造的に力強く支えている点に興味を感じていた。宗教的機能を持った「光の絵画」として信仰の対象であるために、火災や戦争で破壊される度、縁取りや十字の鉄柵で補強されてきたことから、図柄を現代における信仰の対象である豊かな食文化と、立体交差の夜景に象徴される快適な東京のイメージを組み込み、そのような現実も同様に破壊されるというイメージに置き換えた作品。

2 その時々にそれまでの枠から外へ出るためのあらたな気付きを与えてくれた。

3 平面作品の基本を絵画に据えて、個々の作家がそれぞれに新しい方向性を見出すための場であってほしい。

4 世の中がグローバル化した今、海外の人にはいまひとつピンとこない、日本人にだけ伝わる作品とはどういうものかを考えている。

5 2022年9月4日~ 11月3日「日本の中のマネ」練馬区立美術館
  2023年9月23日~ 11月19日「福田美蘭展」(予定)名古屋市美術館

VOCA1994 世良 京子 SERA Kyoko

VOCA展30周年おめでとうございます。
《BACK OF BLACK》は私にとって初めて作品をカンヴァスに載せた作品でした。ですのでVOCA展の存在は、絵への扉が開かれた場と説明してもいいのではないかと今振り返って思います。大学では具象の彫刻を学んでいましたが、卒業後、制作場やそこで費やせる時間の確保が難しく、場所も時間もより自由なデッサンや意味不明なドローイングの線などが頻繁に出てくるようになり、それらの落ち着いた場が、大きな紙やカンヴァスの上という、なんとも意欲だけの、なんの計画性も持たないあたふたした道のりでした。
しかし丁度その頃心理学の本を読み漁ってもいて、人の意識の構成などの大きな理解に興奮し、それがきれいに作品制作と結びついた初めての経験でもありました。それまでの制作という言葉から、創造という言葉にぴったりくるような感覚を知るようになりました。ですから、こだわっているというところは?という問いの答えは「あの感覚」ということになります。絵画という言葉の規定が今どこに置かれているのかわかりませんが、あの狭く薄い場の上で何かを起こすことはまだまだ可能でしょうし、多くの方の挑戦の場を提供して頂いていることに感謝しています。

VOCA1995 三輪 美津子 MIWA Mitsuko

ここ何年か体調を崩したこともありアートの世界からは完全に離れておりました。
その間、世界はコロナや戦争の渦の中に。
「人間は生きるために生きている」、生きるとは「見ること聞くこと感じること」に他ならないと今更ながら思い知らされることとなりました。
この世界情勢がもたらす影響が、アートの本来持つ可能性を歪めてしまうことがないよう願うばかりです。
この夏、「国際芸術祭あいち2022」に参加することになり、久しぶりに現場復帰することになりました。

5 2022年7月30日~ 10月10日「国際芸術祭あいち2022」愛知芸術文化センター

VOCA1996 東島 毅 HIGASHIJIMA Tsuyoshi

30年、ほぼ自分のPAINTING歴と一緒です。
VOCA賞が土台となって、これまで30年続けてきました。
今もこれからも自分の身体感覚を大切にして、良い絵、新しい絵を実現していければと思っています。
30に0がついて、今から300年後、どのような世界になっているのだろう。
ふと、数字をみて思いました。
Me 3.0- 300。
※ Me 3.0とは、自分自身をアップデートする、変化し進化していくことを表現した東島氏の造語

VOCA1997 小池 隆英 KOIKE Takahide

VOCA賞を受賞したのは1997年ですが、おかげさまで多くの方々に知っていただく事となり、私にとっては忘れられない記念すべき年となりました。
VOCA展も30周年ということで、その間世の中は目まぐるしく変わりました。そのような中で私の作品がどのように変化してきたかは私も未だに把握しきれておりませんが、 20周年記念の稿でも書いたように、VOCA展はこれからも私にとっての貴重な定点観測の場であり続ける事に変わりはありません。

VOCA1998 湯川 雅紀 YUKAWA Masaki

1 円板を線でつないだモチーフは、ドイツ留学時代、図書館で生物図鑑を閲覧していた時、載っていたミミズの内部構造の図が興味深く、その構造を絵にしてみようと思いついたのが始まりでした。以来、円板が集まって様々な動きを見せるその情景を作品化するのが自分の制作の大きなテーマとなりました。円板は最初、直線で繋がれていましたが、何本も数珠つなぎになっている円板のラインを描いているうち、隣同士がつながって網目状に展開してゆきました。「VOCA展1998」で賞をいただいた作品はその頃のものです。自分のキャリアの出発点となりました。

4 最近は、色面の重なりによる画面構成に関心が移りました。円板も線も描かず、周囲から塗りせばめて円板を示唆する色面を形成させる手法で制作しています。そしてその色面が奇妙で不思議な形体を形づくる瞬間を楽しんでいます。
また絵の具の塗り方も様々な工夫を凝らし、再現不可能な筆の跡や、絵の具の滴りなども利用して、ライブ感あふれる画面づくりを目指しています。ドイツで制作活動を始めた当初の、何も考えず、何を描けばよいかもわからず、ただ紙に絵の具を塗り散らかしていた頃の、あの感覚を取り戻したいなあ、と思いながら日々画面と向き合っています。

5 毎年8月末に東京銀座のコバヤシ画廊で個展を開催しています。

VOCA1999 やなぎ みわ YANAGI Miwa

写真作品の初受賞ということで、審査員の皆さんに賛否両論の雰囲気がありました。今後VOCA賞該当作品の定義をどうするのか、という問いが授賞式でもあったように記憶しています。受賞から19年後の2018年、シンポジウム「何を想い、描くか?」に参加し、少しその振り返りができました。これからもそういった議論の場がもたれる事を期待します。
この作品でCG作業のボリュームが撮影を上回り、それが<エレベーターガールズ>のシリーズから先に進むきっかけになりました。
ありがとうございました。
現在は、写真と舞台制作の二足のわらじを履いており、舞台は作演出・美術、主たるは野外劇の公演です。写真作品は、8x10の暗箱カメラによる果樹や植物の撮影を行っています。

VOCA2000 岩尾 恵都子 IWAO Etsuko

VOCAが30周年を迎えたと聞き年月について深く考えさせられています。
私の場合ですと、2000年の受賞なので22年の時間が流れたということです。良いこともあれば悪いこともあった分厚い年月に言葉を失います。しかし今でもVOCAの文字を見るとあの頃を思い出し、初々しく気恥ずかしく晴れやかな背中をポンと押される気持ちになります。
世界において絵画の立ち位置はたった30年の間にも変化し続けているのですが、これからも新しいページを見せてもらえることを楽しみに私も制作に励みたいと思います。

VOCAという場所を作り、支えてくださるすべての皆様に感謝申し上げます。

VOCA2001 押江 千衣子 OSHIE Chieko

VOCA展30周年おめでとうございます。
現在、コロナ禍で押しつぶされないように自分の生活を守ることに懸命に生きています。
そんな中で絵を描くことは一筋の希望です。
この度、VOCA展30周年記念展が神戸で開催されるとのこと、とても嬉しいです。若い時分の自分とじっくり向き合いたいと思います。

VOCA2002 曽谷 朝絵 SOYA Asae

Bathtubをモチーフに、その絵の中に入れるような、五感を呼び覚ます装置のような絵を作りたいと描いた作品です。
まだ美大生だった自分を評価してくださり本当に感謝しています。そこから制作を続ける上で大きな励みになりましたし、多くの作品展示の機会に恵まれ、仲間にも出会えました。これからも今を生きる作家を、応援いただけたらと思います。
今は、平面作品のみならずインスタレーションや映像作品にも活動を広げています。
日常の物事の中に非日常を見出すような絵画、「色と音の共感覚」をテーマにした空間インスタレーション<鳴る色>、そして自身の原画から作ったアニメーションによる「創造の森」をテーマにした映像インスタレーションなど様々なテーマや方法で表現していますが、何をやっても自分の根底には絵画があります。これからも自由に、楽しんで創作に向き合っていこうと思います。

5  2022年10月7日~ 11月5日 個展 「Topia」MGGギャラリー(東京)
  2023年1月 7日~ 2月25日 個展 Hebel_121(バーゼル)
  2023年2月25日~ 3月19日 個展 埼玉プラザノース(埼玉)

VOCA2003 津上 みゆき TSUGAMI Miyuki

2022年春に馴染みの地から東へと居を移し、そのおよそ半年のちに念願のVOCA展出品依頼が届く。何故かその時脳裏には幾度も往来した今や懐かしく思い出す橋から望む水の流れと東山が浮かぶ。もはや遠く覚えている場所が内在する流動や佇まいを、未だ覚束ない場所から丁寧に見返す。なぜ今その場所に呼応するのか。ふたたび出向き、彼の地として対峙した。記憶に経験が伴走しひとつの場所を生み戻していった。誰にも開かれた絵画の場にしたい。如何にしても作り手という個がちらつく絵画の魔と、風景画に宿る客観と場所性。具象か抽象かを問い詰めるのではない。人の周囲に常に在る当たり前の風景を見つめ描くことから問い掛ける。そこに次作の活路があるのではと、受賞作を顧みる。時折同じあの場所に立ち戻るが、少しずつ様相を変えゆく場は生きもののように次々と新しい風景が立ち上がる。大きな揺れを些細な事実で捉えたい、見て描く、スケッチする事から探っていきたい。

VOCA2004 前田 朋子 MAEDA Tomoko

この度は、VOCA30周年、誠におめでとうございます。
《It overlooks》は強度の近視の為、失明の可能性に不安を抱えていた時期に、視覚の認知行為について考えて制作したものです。体全体を覆い込むサイズの画面に「描く」というよりも、エアーコンプレッサーを使用して、油絵の具を吹き付けて制作しています。画像が立ち現れるといった現象を意識した作品です。当時は撮影した画像を数センチのサイズにトリミングし、モチーフにしたのですが、粒子が見えるほどに拡大し、暗室で潜像が画面の中に立ち現れるように見えるような、形が揺らぐことで、視覚の認知が能動的になるような作品を制作したいと考えていました。
VOCA展への出品をきっかけに、多くの人の目に触れる事となり、色々な縁が繋がって、関西圏以外の様々な地域や国外での展覧会に出品させて頂ける機会を頂いたと思います。

VOCA2005 日野 之彦 HINO Korehiko

当時は高校に教員として勤めながら、毎日帰宅後に絵を描いていました。夕食後の8時くらいから寝る12時くらいまでだったと思います。
VOCA展の推薦をいただいたことは毎日の制作の励みになりました。夕食中に受賞の電話連絡を受けたときのことを今でもはっきり覚えています。毎日たんたんと絵を描く生活リズムは今も変わっていません。人の姿を克明に描こうという考えも当時のままです。先日第一生命のロビーでおこなわれている30周年記念展で、久しぶりに自身の出品作を見ました。今とははだいぶ描き方が違っていて、勢いや決断力のある描写が新鮮に感じました。良いのか悪いのかはわからないけれど、今は当時よりも試行錯誤しながら描くようになり、一枚の絵にかける時間が長くなりました。

VOCA2006 小西 真奈 KONISHI Mana

VOCA賞を受賞したことにより、たくさんの人に作品をみてもらうことができ、それに背中を押されるようにして制作を続けてきました。
受賞作を描いた頃とは、私生活の面でも社会全体でも大きな変化があり、それに伴い自然と作品制作のペースやモチーフも変わっていきました。コロナ禍で取材旅行に行くことができず、はじめは制作すらやる気がおきなくなり無気力な日々を送りました。その後ようやくひとりアトリエにこもり絵に向きあうことで、新たな制作ペースができてきました。身近な公園や植物園をモチーフにバリエーションを試すことに面白みを見出し、自分の絵画を発展させていけるようになりました。どんな環境に置かれても制作を続けることでしか前に進めないのだと思います。

VOCA2007 山本 太郎 YAMAMOTO Taro

2007年に受賞した作品は能楽の「弱法師(よろぼし)」という曲をモチーフに描きました。古典的な絵画の中に現代の要素を入れ込んだ「ニッポン画」を描いてきた私にとっても大きな挑戦であり、転機となった作品です。当時のVOCA展では日本画系の作品が受賞することは少なく、大賞をいただいたときには驚きの方が大きかったです。受賞をきっかけに多くの方に作品を知っていただき次の活動につながりました。本当に感謝しています。VOCAがなければ今の自分はないと思っています。
この受賞作品からの流れで、現在も伝統芸能をテーマにした作品や地域の伝統文化などを題材にした作品を描いています。一方でさまざまな企業やキャラクターとのコラボレーション作品も増えてきて活動の幅は大きく広がりました。
VOCA展は今後とも若手アーティストのチャンスを広げる場であり続けてほしいと思っています。
今年は出身地の熊本県のつなぎ美術館で住民参画型のプロジェクトに取り組んでいます。年内にプロジェクトをベースにした展覧会もありますので自分でも楽しみです。

VOCA2008 横内 賢太郎 YOKOUCHI Kentaro

3 推薦者として関わってみたい。

4 インドネシアとオランダでの滞在を経て、現在も絵画を制作しています。これまで「変質」や「接ぎ木」を制作のコンセプトやキーワードとして考えてきましたが、江戸時代の日本に伝来した図像や、素材としてインディゴを使う事で作品に新たな広がりを感じながら制作をしています。

VOCA2009 三瀬 夏之介 MISE Natsunosuke

VOCA展への出品は、片田舎で描かれた、たった一枚の絵が多くの方々に届くのだということを実感させてくれた出来事として強く印象に残っている。13年前の受賞時に寄せた文章の中で私はこのように書いている。
「世界にとって今がとても重要な時期なのだろうという直感がある。20年、30年後から今を眺めたとき、とても大きな転換点だったのだな、とみんなが思うに違いない。それは思い切った破壊をともなう世界の再構成のことかもしれないし、気付かぬ内に取り返しのつかないレールに静かにのってしまうことなのかもしれない。」あれから東北に居を移し、東日本大震災に直面し、世界は未だ混乱の渦中にある。《J》と題した受賞作を現実が圧倒的に乗り越えてきたように思う。
ここ最近は絵画一点で言えることの限界を感じていて、展覧会というフォーマットでスケール感の大きな物語を作り上げることに夢中になっている。

5 2022年9月3日~ 25日  山形ビエンナーレ「現代山形考- 藻が湖伝説」山形県郷土館 文翔館議場ホール(山形)

VOCA2010 三宅 砂織 MIYAKE Saori

受賞作《内緒話》と《ベッド》は、さまざまな経緯で目にした画像を切り貼りして一つの場面的なイメージを作成し、そのイメージを光透過性のPETフィルムにドローイングして、暗室で印画紙にプリントするというプロセスで制作しています。イメージを光で型取りするようなことだと考え<Image castings>というシリーズ名で呼んでいます。
VOCA展では、多くの美術関係者や鑑賞者の方々に作品を見ていただけたことが、とても励みになりました。
近年は、誰かが見たものとして既にある画像をモチーフに、人々の眼差しに内在する「絵画的な像」を探究し、それらを多声的に浮かび上がらせる試みをしています。「影」というイメージの起源まで遡り考察する手段として、フォトグラム、映像、版画、ドローイングなどの作品を手掛けています。

5 2023年秋 個展 WAITINGROOM(東京)

VOCA2011 中山 玲佳 NAKAYAMA Reika

VOCA展30周年おめでとうございます。
受賞してからもう12年も経ったことに正直驚いていますが、あの年は2011年という東日本大震災のあった年でもあり今でも当時のことが鮮明に記憶に残っていて、私にとっていろいろな意味で重要なターニングポイントだったんだなと思い返すとともに、賞に選んで頂いたことに改めて深く感謝申し上げます。
これからも目の前の日常が少し色濃くなるような絵を描き続けられるよう日々歩んでいきます。

5 2022年9月 個展 MORI YU GALLERY(京都)

VOCA2012 鈴木 星亜 SUZUKI Seia

受賞した作品は、自宅近くだった吉祥寺の井の頭公園を描きました。現在も取材した場所を文章で書きとめ、それを基に描くというやり方を続けています。最近は、支持体に描かされているところに興味があり、まだまだ絵画に興味は尽きません。
受賞から10年を経て感じるのは、その後も長く作家を支援してくださることが如何に有難いかということです。個展やグループ展の機会を頂くことで、私の作品を多くの人に知って頂き、次の仕事にも繋がりました。何より受賞作品をコレクションして、定期的に展示してくださるのが、私の作家活動を後押ししてくれています。
VOCA展が30年も継続し、大作の多い受賞作をコレクションし続けているのは、驚くべきことだと思います。今後も継続して活動をしてくださることを強く願っております。

VOCA2013 鈴木(花房)紗也香 SUZUKI (HANABUSA) Sayaka

1 窓や鏡、画中画などあらゆる「フレーム」をテーマに室内風景を描きました。絵画的構成を意識しながら、あらゆる表現が入り混じるイメージで制作しました。

2 まだ学生で無名だった私を多くの方に知っていただくきっかけになりました。

3 VOCA展には、変わらず若手作家の憧れのコンペティションであり続けてほしいと思います。

4 私自身の作品の制作テーマは変わってはいませんが、現在地域社会での文化体験の格差を埋めるためにワークショップやレジデンスなどのアートイベントの開催に力を入れています。

5 2022年8月27日~ 12月4日 「美作三湯芸術温度2022」(岡山)

VOCA2014 田中 望 TANAKA Nozomi

1 作品のモチーフは座礁したクジラです。展覧会への推薦を頂いた当時、参加していた地域プロジェクト(ひじおりの灯)で出会った人類学者の石倉先生からクジラの話を伺い、それをきっかけにクジラに関わる資料などに触れるうちに、それぞれのモチーフは別々の場所や時代のものですが、同時的に発生するいくつかの物語が、俯瞰してみると何かつながりがあるように感じられてきて、その関係性の渦巻きが形になったのが今回の作品でした。

2 それまで山形で細々と個人的にやっていたことが、たくさんの方に見て頂いて、共有されていくことに驚きました。そのスピード感や広がり方に怖さを感じる面もありました。絵画といっても物語を描くだけではなくさまざまな思索のあり方がある事に触れられたのは、その後の自身の制作や研究にとても刺激になりました。

4 2014年ころからフィールドワークと作品の関係性についてずっと悩んでいますが、その悩みや考察の過程が作品になっているような感じで、現在も常々考えています。

VOCA2015 小野 耕石 ONO Koseki

アートサバイバルは不安定なもので、VOCA賞受賞の連絡をもらったときは、そろそろ建築現場の木部補修屋の仕事を復活させないといけないなと思っていた矢先のことでした。作品はそう簡単に売れていくものではないし。しかも僕の目指すものは用途もなく、観客のいない表現であるため、なかなかどうして体力のいる行為でした。制作を続ける衝動を絶やさないようにと考えていたとき、フッと気付いたことがありました。「壁に展示できる作品が少ないんじゃね?」。そうして壁に展示できる作品を制作し始めたのが<Hundred Layers of Colors>シリーズです。行為を集積させていくことを平面に落とし込むのは少し抵抗がありましたが、僕の代表作の1つになりました。現在は点を刷るという行為をもっと単純化して保てるように、さらには行為の自立(行為が支持体から自立し、集積が物体として成立し立っている)も作品化している。こっそり作っている作品も。

VOCA2016 久門 剛史 HISAKADO Tsuyoshi

1 当時は平面的な作品をほとんど制作していなかったのですが、一つだけ壁にかけることのできる考え方を持った作品があり、必然的にそれから発展させた作品を出展することになりました。普段から他の作家の作品を見るときも、想像の余地をたくさんこちらに委ねてくれるものに感銘を受けることが多いので、自分の作品としても鑑賞者に語りかけすぎないものを目指していました。推薦者である林寿美さんの助言やカタログに書いて下さった論考によって、自分では言語化が難しかったこともクリアになり、氏にはとても感謝しています。

2 壁にかけることのできる作品や平面作品をつくることにも視野が広がったと思います。
その後、VOCA展に出展した作品から徐々に派生し、半立体、手書きのドローイング、ペインティング、シルクスクリーン、コラージュ、石板などの作品に繋がっていきました。

3 年によって、また審査員の方々によって受賞作品の傾向は変わりますが、平面を主戦場にしていない作家の皆様も躊躇いなく自由に表現できるような空気感を持ったフィールドになってほしいと思います。

4 現在は作品の形態を特に問わず制作活動をしています。できるだけ様々な素材を等価に扱い、作品の主題を柔軟に表現することを目指しています。2018年にアイスランドに訪問したことがきっかけとなって、人間の文明と自然環境の関係、それらの歴史に今は興味をもっており、リサーチしたり、一個人としての表現の可能性を探しています。

5 2022年8月20日~ 10月8日 個展 OTA FINE ARTS オオタファインアーツ(東京)
  2022年9月17日~ 9月25日 メルセデス・ベンツ アート・スコープ2022-2024 「EQ House x久門剛史」 (東京)
2023年 個展(予定)

VOCA2017 幸田 千依 KODA Chie

1 作品は、東京の京浜島の須田鉄工所という大きな工場の一角をお借りして制作しました。
当時住んでいた大田区の家から毎朝5時に起き、自転車で京浜島まで通いました。
海に着く頃日が昇り、毎朝その景色に感動していたのを覚えています。絵を描くために開かれた道、そしてそれが毎日繰り返されるうちに、行き帰りにみた景色がだんだんと自分のものになっていったのだと思います。 

2 2017年に出品させていただくまで約7年ほど日本各地を転々として住みながら描く、ということを主にやっていました。
自分なりに生きることと描くことが噛み合って、絵の中や心にその実感が確かなものとなっていく中で、その確かなこと、が多くの人にとっても何かしら伝わるものなのか、VOCAに出品し、それを確かめることができ励みになりました。

3 VOCA展に期待することは、続けていってほしいです。定点観測していきたいです。

4 個人的な経験や体験と結びついた風景を、描くことによってどう、人への言葉にならない思いへ昇華するか。

VOCA2018 碓井 ゆい USUI Yui

2009年の(今は無き) 民主党の決起集会で、日本国旗を2つ縫い合わせて作られた党旗が掲げられ、当時の与党支持者から強烈な批判を浴びた、というちょっとした「事件」があったそうです。確かに、その意匠は白地に赤い丸が2つ並んだもので、作った人にとっては赤い丸が描かれた布を使ったに過ぎなかったのだと、私は感心してしまいました。
と同時に、私が10代の頃は国旗を学校の式典で掲揚することに抵抗する人たちが確実にいたにもかかわらず、2010年代には存在感がほとんど無くなっていることにも気付かされました。それは、同時期に台頭してきた排外主義と確実に関係しており、この状況に対し、小さな石でもいいから何か投げなければ、という思いがありました。
VOCA賞は「ペインティング」という印象が強かったので、キルトで、しかも社会批評的な私の作品を選んでいただき、驚きました。
もちろん、賞というものは優劣の結果ではなく、審査員の方々の「今はこれ」という意思表示ですので、そういう意味では作品にとって非常に有難い賞でした。

VOCA2019 東城 信之介 TOJYO Shinnosuke

VOCA展に推薦された2018年は東京オリンピックの開催の2年前。高校生の時に長野オリンピックを地元で経験し否定的なイメージしかなかった自分は、多くの人の目に触れるこの機会に、オリンピックをテーマに作品を制作しました。約2週間のために長野の街中は一変し過ぎ去ればプチバブルの反動で潰れる店が続出。2017年にアテネで観た光景は長野を彷彿とさせられ、この世界的祭典が及ぼす影響が計り知れませんでした。《アテネ・長野・東京ノ壁ニアルデアロウ摸写》という作品タイトルには造られ消される無情さも込められています。実際3都市の壁にある落書きを転写しました。そして多分その落書きは既に消されているか、壁自体がもうないかもしれません。
それでも残る何かを考えられる作品になればと思います。

5 2022年8月5日~ 9月4日 瀬戸内国際芸術祭2022(小豆島)
  2022年11月 個展「parcel」(東京)

VOCA2020 Nerhol

2020年のVOCA展にてVOCA賞をいただきました。コロナが流行り始めた時期だったので、他館が閉館する中、最後まで開館し続けてくれたことは、上野の森美術館の、ひいては学芸員の気概を感じた展覧会だったと思います。VOCA展には2回推薦していただきました。どちらの推薦者とも、対話し作品を作る流れをとり、それはとても実りの多い事でした。私共二人組の作家、かつ純粋な絵画ではない半立体作品。はたまた写真でもない。そんな普通に評価できない稀有な私共を推薦することはとても勇気のいる事だと思います。
推薦者も熟考の末、作家を選び展覧会に臨んでいることを知りました。作家と推薦者が共に展示に向かうとき、両者はその思考の近似値が高くなることを意識させてもらえました。作家は自ら考え、決定し、行動するものですが、それは推薦者も同じで、簡単なことではないと思います。様々な角度から、自己や社会を捉えるため、積極的に他者や社会へ関わることが大切だと思う展覧会でした。

VOCA2021 尾花 賢一 OBANA Kenichi

VOCA展は何かと頭の片隅に引っかかっていた展覧会でしたが、自分には縁がなく、遥か彼方にある存在だと感じていました。それだけに幸運にも出品することになった際には、過剰に意識して自分を大きく見せず、普段の制作姿勢で臨もうと決意したことを覚えています。
上野という土地の取材からスタートし、そこから湧き上がってくるものに身を委ねる。思いがけずに出会った資料やイメージを繋ぎ合わせ、自分なりに手応えのある作品へと辿り着いたことにひとまず安堵し、作品集荷の日を迎えたのを覚えています。
受賞の知らせをいただいた際には、家族だけでなく、近所の人たちも喜んでくれました。知り合いのお婆ちゃんからお祝いに団子をもらったことも強く印象に残っています。
運と縁に恵まれて、たまたま巡り会えた受賞。それだけにこれからも一日でも長く、充実した制作環境に身を置けるよう、精進していきたいです。

VOCA2022 川内 理香子 KAWAUCHI Rikako

VOCA展に出展したことで、よりたくさんの方々に作品を見ていただける機会になり、その反響も大きいもので、改めてVOCA賞が継続的に存在感のあるものとして美術の中で認知されているものなんだと肌で感じました。
古くからある由緒正しい賞だけれど、時代の流れによって変化し続け、新たな風をもたらすものであり続けて欲しいです。

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概要

VOCA30周年記念 1994-2023
VOCA 30 YEARS STORY / KOBE展

会期2023年3月9日(木) ~ 3月25日(土) *休館:月曜日
時間10:00~ 17:30 *最終入場は閉館30分前まで
会場兵庫県立美術館王子分館 原田の森ギャラリー (兵庫県神戸市灘区原田通3-8-30)
入場料 一般 800円(税込) / 大学生 400円(税込) / 高校生以下無料
企画券 ペア券 1,300円(税込)
VOCA 30 YEARS STORY / KOBE 入場券2枚セット販売となり、お二人で入場の方、またはお一人で会期中2回入場いただく方にお得なチケットです。
*販売期間 2023年1月6日(金)10:00~3月8日(水)23:59
主催(公財)日本美術協会 上野の森美術館
後援兵庫県、(公財)兵庫県芸術文化協会、神戸新聞社
特別協力第一生命保険株式会社
協力ヤマト運輸株式会社

※その他、詳細は決まり次第HPにてご案内します。