現代美術の展望「VOCA展2011 −新しい平面の作家たち」 選考所感
2011年開催概要受賞作品作家一覧選考所感イベント

選考所感

選考委員長 高階秀爾 (大原美術館館長)

今回のVOCA展では、明確なテーマをそれぞれ特異な表現手法で追求する意欲的な作品が目立った。VOCA賞を得た中山玲佳の「或る惑星」は、鮮烈な色模様とたくましい動物存在とを重ね合わせた明と暗、色と形の大胆な対比構成のなかに、自然の根源的な生命力の神秘を表現した秀作で、新しい表現世界を切り拓いた見事な達成と言ってよい。その他の受賞作も、いずれもきわめて独自で、絵画の多様性をよく示す結果となった。


酒井 忠康 (世田谷美術館館長)

混迷の時代のようすを、さまざまな手法で描いている作品に接し、主題のことよりもむしろ手法の細部に神経が行ったことを気にしています。それだけ平面(絵画)に対する若い人たちの関心が、ある意味で「技法」に集中しているのを知りましたが、いま少し絵画と「外界」との関係にも踏み出して、時代の様相をアブり出してもよかったのではないかと思いました。全体的な印象は、前回よりレベルの高い作品がそろっていたように感じました。


建畠 晢 (京都市立芸術大学学長)

昨年と同様、受賞したのはすべて具象作品であり、また女性画家ばかりであった。選考の過程で特に意識したわけではなく、絵画を巡る時代の状況を直接に反映した結果というべきだろう。VOCA賞の中山玲佳の作品は、背景に独特の物語性を宿しているように思われることが、画面に謎の魅力を与えている。いくつかのイメージを分割的に並列する手法も興味深い。


本江 邦夫 (多摩美術大学教授)

突出した作品がなく、ひじょうに難しい審査になりました。VOCA賞の中山玲佳さんは多彩なイメージを造形的に力づよくまとめあげた点を評価すべきでしょう。森千裕さんは何といってもヴィジョンの新鮮さが魅力的。後藤靖香さんと熊澤未来子さんには手がたい描写の安定感があります。絵画的にもっとも過激だったのは澤田明子さん。岩彩の物質感を生かした、余白とせめぎ合う異形の人物(自画像?)に今後の可能性を感じます。


光田 由里 (美術評論家)

目立つ傾向や突出した作品よりも、並置された諸イメージの危うい釣り合いが全体の印象になった。それは観者と画家のあいだに絵を読む文法が共有できない状況のなかに、編み出されつつある現代の語法だろうか。統一的な視点を避けて、交錯し層を成す物語が紡がれている。多彩な技法を並列的に駆使するVOCA賞の中山玲佳さんの作品がそれを代表していた。森千裕さんの不穏な画面にはトゲのある批評が埋まっているだろう。後藤靖香さんが戯画的に示しているものは、記憶のコラージュというべきだろうか。


南嶌 宏 (女子美術大学教授)

昨年にもまして今年の審査は厳しいものになりました。それはすべての作品に主張があり、それぞれが平面でなければ果たし得ない使命を果たそうとしていたからでした。その中でも「見てはならないもの」であることと、「見なければならないもの」であることを同時に成立させる、幾つかの作品と出会えたことは大きな収穫でした。