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VOCA展選考委員「VOCA展2007」選考所感

選考委員長 高階秀爾(たかしなしゅうじ) <大原美術館館長>

今回もまた意欲的な作品が多く、平面絵画の多様な可能性をよく示す内容であった。VOCA賞の山本太郎は、銀箔地の二曲屏風という日本の伝統的形式を利用して、歴史との対話から機知に富んだ新しい世界を鮮やかに創り上げた。奨励賞の池田光弘はイメージの新鮮さで、また傍嶋崇はのびやかな形態と力強い筆遣いが注目された。佳作賞の中岡真珠美は洗練された色彩感覚が、田口和奈は抑制の効いた情感表現が評価できる。


酒井忠康(さかいただやす) <世田谷美術館館長>

平面(絵画)の可能性を探るこころみは、いずれの作家もそれぞれ自己の手法で追求しているのは解りますが、袋小路に入ったような窮屈な気分があって、私にはちょっと低調な感じがしました。しかし、これもまた試練の過程なのだとすれば、作家それぞれが(あまり結果を気にせず)出口を求めなければならない。その途中のモガキのようすをみたように思いました。


建畠晢(たてはたあきら) <国立国際美術館館長>

今年のVOCA展は、ある意味でオーソドックスな具象のタブローが多く出品され、また最近注目を集めている日本画の新たな動向が反映されてもいた。賞にもそのことが自ずと示されることになった。VOCA賞の山本太郎は、屏風仕立ての日本画だが、特異な発想によるモチーフが興味深い。奨励賞の池田光弘と傍嶋崇は共に強いマチエールと筆触に支えられた作品で、技術的な完成度も高い。


本江邦夫(もとえくにお) <多摩美術大学教授・府中市美術館館長)

いつになく低調な内容で不安を覚えざるをえない。既成の枠組みから脱出しようとの意欲もなく、かといって洗練をきわめようとの集中力もなく、山本太郎(大賞)の斬新な構図、田口和奈(佳作賞)のイメージの神秘化を数少ない例外として、すべては混迷のうちにある。奮起を期待したい。


宮崎克己(みやざきかつみ) <美術史家>

VOCA賞の山本太郎氏の作品は、江戸時代のたとえば広重などにしばしば見られるような、イメージの連想による諧謔を現代的に再現している。奨励賞の池田光弘氏の作品は、神話的な記憶と近未来の核戦争の予感とが入り混じった、一種のオブセッションとしてのイメージを実現している。たとえば10年前のVOCA展を思い出すと、さすがに雰囲気がずいぶん変わったと思う。抽象表現主義的なもの、濃厚な色彩のもの、重いメッセージのあるものがやや少なくなり、白、透明、軽さが基調になっているように見える。


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