昨年夏、上野の森美術館は本館の隣に別館ギャラリーを新しくオープンしました。ここでは、小粒でも、今までできなかったような企画を開催したいと考えます。毎年春のVOCA展の時期には、なにかしら関連した個性的な企画をと考え、平面作品をテーマとしたVOCA展の過去の出品者のなかから、彫刻、インスタレーション、映像作品など、おもに平面以外のメディアで活躍するアーティストを選んで小さい個展を開催することにしました。「平面」の枠組みをはずした制作をVOCAの展示と対照させることにより、平面というメディアの可能性や、それをテーマにする展覧会の意義を逆に照らし出し、とらえ直す機会としたい。
…以上が田中功起、すなわちVOCA展史上、これまで唯一のビデオ(動画)作品、《カツラ》(2003年)を出品したアーティストの個展を企画した趣旨です。というより、最初から田中功起を念頭に置いて導かれた趣旨である気もします。
ものごとの本質を小気味よくとらえる知性と抜群のフットワークで、田中は国内でも海外でも着々と制作と発表を重ね、いつも気になる存在であり続けます。今回は、最近作《Everything is everything》(2006年)の上映と、田中とゲストによるトークシリーズを中心に、田中功起が立ち止まって自分自身を検証する、そんな展覧会です。
坂元暁美(上野の森美術館学芸員)