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ニューヨーク近代美術館名作展開催に寄せて


 MoMAの略称で知られているニューヨーク近代美術館は、世界中の美術愛好家にとって、いわば聖なる巡礼の地です。近代美術の殿堂として、ニューヨーク近代美術館は、明確なコンセプトに基づいた幅広い視点と、新しいものを恐れない積極的な冒険精神と、そしてその多面的な活動を支える充実した調査研究体制によって特徴づけられると言ってよいでしょう。

 ニューヨーク近代美術館のコレクションが、セザンヌ、ヴァン・ゴッホ、ゴーギャンなど、1880年代の芸術家たちから始まっていることは、20世紀の美術がまさしくこの時期に出発点を持っているという見方をはっきりと示しています。印象主義の革命とともにひとつの時代が終わりを告げ、印象主義の遺産を受け継ぎながらそれに反撥して、かってない新しい表現世界の探求に赴いた画家たちとともに、もうひとつの別の時代が始まったのです。フォーヴィスム、キュビスム、表現主義、そしてさらに抽象絵画、シュルレアリスムへとつながる20世紀の前衛芸術運動は、その直接の落とし子に他なりません。
 これらさまざまの前衛運動が、互いに刺激し合い、時には相対抗し合いながら同時に並存していることが20世紀美術の大きな特色のひとつですが、それと並んで、造形表現の範囲が著しく拡大したことも、もうひとつの特徴として見逃してはならないものです。
 これまで二度にわたり開催されたニューヨーク近代美術館展は、卓抜な理念を基調にして、その美術史の豊かな流れをよく示すものとして大きな成功を収めました。

 今回の「ニューヨーク近代美術館名作展」では、MoMAが最も豊富なコレクションを誇る、マティスとピカソを中心に、20世紀美術の魁となったセザンヌから抽象表現主義のポロックまで24人の代表作75点で構成されています。マティスが、大作の「ダンス(第一作)」をはじめ18点も揃うというのは楽しみです。また、セザンヌとゴッホの作品は、ともに近年MoMAに遺贈された秀作です。
 MoMAの傑作群から精選した各々の代表作によって、未曾有の変貌をみせた20世紀美術を検証するという試みに興味を覚えています。20世紀前半の美術の精華が、この機会に紹介されることを期待しています。

東京大学名誉教授 高階秀爾


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